第15章 出発前夜
ふとした瞬間だ。
紗英の呻き声と
鬼灯の溜め息。
その隙間に出来た
ほんの一瞬の沈黙。
「………」
「………」
どちらからともなく
逸らす視線が再び
重なり合う時──
「あの約束を覚えてますか」
鬼灯が漏らした言葉に
紗英は弾かれたように
顔を上げた。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.
空白が埋まる刻
動き出す恋模様
二人の脳裏に浮かぶ
“あの日の約束”
「その代わり約束して下さい」
「何を?」
「白澤(あいつ)が……もし
あなたを酷く傷付けたら、
その時は私が嫁に貰います」
「え……それ、本気なの」
「寧ろ本気でしかない」
「……うん。分かった」
【十五ノ章】
出発前夜___終