第15章 出発前夜
一体何がどうして
こうなったのか。
難しげな書物や雑貨で
埋め尽くされた鬼灯の部屋に
紗英は座らされていた。
「粗茶です。どうぞ」
自信ありげな低音ボイスで
熱々の湯呑みを差し出される。
普通そこは
「粗茶ですが」
だろうと、
紗英は心中で思ったが
突っ込んだりしたら
ブッ飛ばされそうなので
黙っておいた。全力で。
「う゛……苦い」
湯呑みに口を付けた紗英は
顰めっ面で舌先を出した。
「私特製の薬膳茶です。
良薬口に苦し、元気が
出て来るでしょう?」
「苦過ぎて……元気を
吸い取られそうです」
「……また減らず口を」