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(R18) 雑草ノ花 (壱) ─鬼灯の冷徹─

第14章 薄れゆく温もりの中で


紗英は心臓が
強く拍動するのを感じた。

「気の早い人ね。
お触りは座敷に上がるまで
お・あ・ず・け・よ?」

この声は確か、
三件隣の十六夜太夫
……白澤の元専属だ。

更に追い討ちをかけたのは、

「ぼくもうがまんできなーい」

などと明らかに
泥酔した様子で
言ってのける白澤の声。

「……っ」

紗英の頬を一筋の
涙がゆっくりと伝う。

一体どういう訳で
白澤がこんな暴挙に
出ているか知らない。

知りたいとも思わない。

「こんなに……っ
貴方が好きなのに」

咽び泣く彼女の独り言は
誰の耳にも届くことなく
女郎部屋に消えていった。
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