第14章 薄れゆく温もりの中で
「おい!お前……っ
酷い熱じゃぞ……!」
着物越しでも充分に
伝わる程、紗英の
肌は体温が高かった。
慌てて彼女の顔を
覗き込んだ檎は、
その白い肌に浮かぶ
大粒の汗に目を見開く。
「こりゃァいかん……!
すぐに医者に見せにゃ!」
「……檎、」
虚ろな目で檎を見つめ返す
紗英の声に生気はまるでない。
「私なら大丈」
「大丈夫な訳ないじゃろが!」
彼女の強がりを遮った檎。
彼は既に紗英の
手を引き休憩室へと
足を進めていた。
檎の秘めたる恋心を
彼以外に知る者は居ない。