第13章 【花街ドランカー】
「紗英さん?」
男の低い声がした。
抜き襟から覗く白い背が、
クルリと後ろを振り向く。
「鬼灯様……!」
久方ぶりの再会。
見事なまでに小粋な遊女に
成長した紗英の姿を見て、
鬼灯は深い溜息を吐いた。
まるでグレた娘を持つ
父親の気分だった、と後に
彼は部下に愚痴る事になる。
しかし、それ以上に
彼は思うことがあった。
「(……似てる)」
憧れて止まない
ミステリーハンターの
お姉さんに、口元が。
それって似てるうちに入るの?
方々からそんな疑問が
聞こえてきそうだが、
彼曰く「入ります」らしい。