第13章 【花街ドランカー】
カラン、コロン
素足に高下駄の粋な女が
花街をひとり闊歩する。
「おい見ろよ」
「えらく美人だな」
「そそるねえ」
道行く男達は次々に
視線を送り、耳打ちしては
彼女の美しさを讃えた。
「どこの子だい?」
「狐御前の新顔だとよ」
「妲己も大儲かりだな」
女は思う。
幾千の男に褒められようが
億万の男に愛されようが、
私が恋するのはあの御人だけ。
カラン、コロン
華やいだ地獄の町に
小気味好い音が響く。
彼女の名前は紗英。
かの有名なぼったくり妓楼
【花割烹狐御前】
期待の新入り遊女である。