第13章 【花街ドランカー】
静けさを取り戻した
座敷に残るのは、
皺の寄った布団と愛の余韻。
虚無感にも似た夢の痕を
名残惜しそうに見つめて
白澤は身支度を整えた。
「また会いに来てもいい?」
相変わらず飄々とした
彼の目元がふわりと綻ぶ。
「……ええ」
紗英は乱れた髪を
手櫛でそっと整え
微笑み返しをした。
「毎日通っちゃうかも」
「嘘ばっかり。いやな人」
「あのね、前にも言ったけど
ワタシ嘘付かないホントアル」
「ふふ……可笑しいの」
この時、紗英の胸が
張り裂けんばかりに
高鳴っていたことを
白澤は知らない。