第12章 炸裂母親節
鬼灯の親指と他四本の指の間に
挟まれて、紗英はもそもそ喋る。
「ひょっ……ひゃはひ(離してよ)」
「よく聞き取れませんね。
そんなに離して欲しけりゃ
ちゃんと日本語で言え」
「(聞こえてる癖に……!)」
地獄一の仏頂面が
怒っているのには
理由があった。
【花街で遊女になりたい】
突然自室を訪ねてきた紗英が
突拍子もない事を言い出したのだ。
しかもその理由を問えば、彼女は
「白澤さまを振り向かせたいから」
だと真剣な顔で言ってのける。
「そんな目をしても無駄です。
泣き落としは通用しませんよ」