第11章 少女の記憶「夢」
「ねえ白澤さま」
「なあに?」
「私と結婚して」
彼の家に来てから数時間後。
そろそろ帰る時間が
近付いている事を悟った私は、
奇想天外なことを言った。
白澤様は美麗な唇を
「うーん」と尖らせて
企み顔をしている。
「じゃあさ」
彼と離れたくない一心で
口から出てしまった言葉。
そんな子供の戯言に
白澤様が出した答えは──
「大人になったら会いにおいで?
その時は紗英ちゃんを
お嫁さんにしてあげる」
これまた月並みな台詞と
ちゅ、と可愛い音を立てる
おでこへのキスだった。