第11章 少女の記憶「夢」
「ねえ、今度は僕が
質問してもいいかな」
薬棚にある物を一通り
答えさせられた後で、
白澤様は小首を傾げて
ふんわりと笑った。
「うん!」
とても笑顔の似合う方だと思う。
喩えればそれは
まるで花の様な。
花が綻ぶと心が癒されるように、
彼が微笑むと優しい気持ちで
胸が一杯に満たされるのだ。
「君の名前。聞いてもいい?」
白澤様は優しげに
目元を細めて問う。
私は幼い頬が少しだけ
赤くなるのを感じながら、
ぽそりと呟いた。
「紗英」
可愛い名前だね。
そう彼が言ってくれたことは、
多分一生忘れられないと思う。