第11章 少女の記憶「夢」
「ねえ、ドングリのおじさん」
白澤様がくれた中華風の
巾着袋をドングリで一杯にして、
私は家の中をくるりと見回した。
「あれは何?」
「ああ……あれはね、
鹿茸(ロクジョウ)だよ。
男の子が元気になる薬」
それから何度も言うけど
僕はお薬屋さんだからね。
おじさんじゃなくて
お兄さんだし、ねえ
僕の話……聞いてる?
白澤様は漢方薬局の
カウンターにもたれて
必死に喋っているが、
私の耳には微塵も
届いていなかった。
「ふーん。じゃあアレは?」
だって、白澤様のお家って
不思議な物で溢れてるんだもん。