第1章 1.私
甘い声で囁かれたかと思うと、私の意識は遠のいた。
それからどれほどたったのかはわからないけれど、しばらく後に私は目を覚ました。
白い天井、白い壁、医者の白衣、一面、白、しろ、シロ。
私はしばらく状況が理解できずにいたが、私が目を覚ましたのを見た医者の反応でよくわかった。
あ、夢じゃなかったのか。
私、生きてる。バイク事故も、あの話も、夢じゃなかったのか。
それだけを思いながら、適当に医者の話を聞き流す。
そこからわかったのは以下の3つ。
1、私はバイク事故に遭ったが、奇跡的に頭を打っただけですんだ。
2、しかしそのせいでいつ目覚めるかはわからなかった。
3、奇跡的に意識も戻り、体にも不調はない。
ふむ。そういうことになっているのか。
念のため聞いて見たが両親は来ていない模様。
知ってた。そういう人たちだもん。
ただ気になるのは、夢の中で「一緒に暮らす」と安請け合いしてしまった人のことで、とかなんとか思っていると、それは来た。
白だらけの病室に似合わない、真っ黒な格好。そしてその服装の中で光るような黄色の瞳と、白い肌。
「どうも」
彼は気だるそうに、なんのことはなく、のんきに病室に入ってきた。
医者たちも警戒する様子なく私の過程を彼に伝えている。
……あれ?どうなってんの?
夢の中の人が、私の体調とか事細かに聴いてる。
私の保護者みたいに。