第19章 chain 零√
「ああ! もう、だから珠紀は何もされてないって言ってるんだから、いい加減信じてやれよ錐生!」
「脅されて言えなくなっている可能性もあるじゃないですか!」
「なんで僕達が何もしていない彼女に、よくわからない脅しをしなくちゃいけないんだよっ!」
「……それもそうか」
あれ? 私の言葉より英さんの言葉を信じてしまうの?
「零って酷い人だね、私の言葉は全然信じてくれない癖に」
「まぁ、珠紀だしな」
どういう意味なのだろう。
零は私の手を引くと英さんに「さよなら」とだけ告げた。英さんも軽く私に手を振るだけで、私をそれを軽く振り返って見つめていた。
無言で歩いていく。なんだか以前にも同じようなことがあった気がする。
「なぁ、珠紀」
「……何?」
「お前は……玖蘭枢が好きなのか?」
「え? なんで……?」
「そういえば、よく目で追ってるなと思って。こうして月の寮に行ったのも、奴に会う……為なんだろう?」
私を見つめる零の瞳が、濁って揺れる。私はぐっと彼の腕を掴むと、立ち止まる。
「零……っ! 私は、玖蘭さんに会いに行くために行ったわけじゃ……っ」
「いいんだ別に! 俺に一々言い訳なんてしなくなって。お前は玖蘭枢がいいんだろ? 優姫と同じだ……。お前達が見ているのは、いつも眩しい光だけ」
零? なんだかいつもと様子が違う気がする。眉間に皺を寄せて、私の手を握る手の力が強くなる。