第9章 大人
「お父さんお母さん、何時頃帰ってくるの?」
「夜だと思うけど…昼すぎに出ようか。どこか行く?」
私たちはお茶を飲みながら、テーブルでコンビニおにぎりを食べる。
「そうだね。うちの両親も僕がいなくてのんびりしてるだろうから…適当に夜まで時間潰すかな」
「真司、そんなこと考えるんだ。大人」
私は感心する。
「実際、大人だし」
「え? エロい意味で?」
私の言葉に彼が笑う。
「みなみ、そんなことばっかり考えてるの?」
「うふ。あ、わたしも大人だからー、お母さん旅行から帰ってきてご飯の準備するの面倒だろうから…
真司、今日どこかで一緒に晩ご飯食べてくれる?」
「うん」
……
楽しい一泊二日が終わっちゃった。
晩ご飯も食べに行って、真司が家まで送ってくれる。
でも、もうちょっとだけ一緒にいたいから家の近所の公園で話し中。
ずっと一緒にいたのに、まだ一緒にいたい。
やっぱり結婚するしかないな。
「明日から、また学校かぁ」
彼がつぶやく。
「学校嫌い?」
私は尋ねてみる。
「別に嫌いじゃないよ」
「そっか。わたしもそうだよ」
「逃げ出したくせに、あの日」
彼がちょっと意地悪っぽく笑う。
「あれは、あの日逃げたかっただけ。学校やめたいとかそんなんじゃないもん」
私は、あの日を思い出して、ちょっとだけ胸が熱くなる。
「明日もお家に寄っていい?」
「うん」
私は彼の肩に頭を乗せる。
彼が、そっと髪を撫でてくれた。