第1章 青い長男の場合「 大切な物 」
気づくと彼は私に背を向けていて。
話聞いてなかったのね。
なんというかまあ、彼らしくて笑いが出る。
「さっきの探し物?」
「うん、には
絶対見つかりたくなかったの」
「………、」
そんなこと言わないで。
また悲しいこと考えちゃうよ、
なんて言えるわけない。
「…そっか、」
彼はふふっと笑い「もお」と一言。
ゆっくり近づいて私を優しく抱きしめた。
久しぶりの彼の香りは
マスカットの爽やかな匂い。
「また、悪いふうに考えたでしょ」
「………」
なぜか、
その言葉だけで泣きそうになった。
何もかもお見通しで、
何も考えてないような顔して。
でも全部わかってくれてて。
そいうところが凄くズルイし、
凄く好きだ。