第1章 青い長男の場合「 大切な物 」
「あ、おかえり智くん」
付き合って4年。
彼が1人暮らしを始めてからはこうして
勝手に上がり込んでは
ご飯を作りに家に来る。
2ヶ月前。
突然、
ぶっきらぼうに鍵を手の中に入れられて。
それはそれは驚いた。
合鍵を持っていても
彼の仕事は時間帯が不定期で、
会えないことがほとんどだけど。
でも今日は久しぶりに
その愛しい顔を見ることができた。
「…来て、たんだ」
靴を脱ぎ、私を見る彼に違和感を覚える。
何事にも動じない彼が少し動揺している?
「…あ、ごめん、もしかして用事あった?」
何も言わずに来ちゃったから?
だからそんなに慌てているのだろうか。