第3章 緑な三男の場合 「花火」
今日は近所の花火大会。
2人で迎える3回目の花火大会。
1度も一緒に行ったことのない花火大会。
「ちゃん!花火大会行こ!」
汗だくになった彼が
ドカドカと部屋に上がり込み
勢いよく私の腕を引っ張った。
「ちょ、ちょっと!雅紀くん!?」
「ほおーら、時間ないって!」
「どうしたの!?一緒にはダメだよ!」
2人でいるとこなんて見つかれば、
彼のアイドル人生が終わってしまう。
「嬉しいけど…お家でご飯食べよ?」
たぶん私のことを思って
誘ってくれたに違いない。
雅紀くんは昔からそういう人だ。
「……ごめん、俺…」
さっきまでの元気だった笑顔が急に無くなる 。
そんな顔させたかったわけじゃない。
「雅紀くん…ありがとう。
嬉しいよ、すっごく!
あー、ほら、こんなに汗かいてる」
彼の額から流れる汗を手で拭って見せると
その手をギュっと握りしめ、
泣きそうな顔でこちらを見る。
あーもう…、優しいなあ。