第1章 屋上で寝てた目つきの悪い人
この人も授業サボってんだ…。
なんだか笑えてきた。
自分と同じ状況にいるその人を乃々花は、じっと見つめる。
あれ、上靴が赤だ。3年生かな。
3年生はもうすぐで卒業なのに、こんなところでサボってていいのかな……。
そんな風に少し心配でもしてみると、その寝ている人物が微かに動く。
ぎゃ、起こしちゃった……?
「…っ、んー、」
パサリと制服が落ちる。
私はその人から目が離せなくなった。
しなやかに目にかかるくらいの髪に、長い睫毛。
肌は透き通るように白く、清潔さを醸し出している。
身長はそんなに大きくないと思われるけど、存在感は圧倒的にあった。
じっ、と、その場に立ち尽くしていると、その人がめをゆっくりと開いた。
そして乃々花の存在に気づく。
「…誰だてめえ」
その人の瞳は切れ長に細く、乃々花を捉えた。
眉間にしわを寄せて、すこぶる目つきが悪い。
でも、何故か乃々花は綺麗だと思った。
はっと、我に返った乃々花が慌てて口を開く。
「あっ、えっと、いや、その、……。私、授業をサボってて……それでたまたまあなたが寝てたから…見つけただけで…」
何故か相手の目が見れない。
その間相手は自分を一度も逸らさずに見つめ返してくる。
ふと気配を感じ、そちらに目を向けると、さっきの人が自分の制服を持って立ち上がっていた。
そして乃々花の横を通り抜ける。
「一年の間からサボり癖つけてたら後から後悔するぞ」
バッと後ろを振り返るとその人はもう階段に繋がるドアを開けていて、帰ろうとしている最中だった。
その背中に慌てて声をかける。
「あっ!、あの!!」
ピタリとその小さな背中は止まる。
そして制服を着なおしながら、振り返る。やはり目つきが悪い。
「…なんだ」
「…えっ、と…」
なんで止めたのかわからない乃々花はただただ困惑していた。
あれっ?なんで私止めたんだろう……!
「…用がないならもう行く「あっ、名前!!」
「……あ?」
必死に乃々花は声を荒げた。
「なっ、まえ……教えてくれませんか……」
「……なんのために」
「えっ、……と、それは……」
「……」