第7章 バイト〜藤ヶ谷編
ふぅっと一息ついてから、太輔も廊下に出ると私服に着替えたマイコがいた。
なんか言いたそうな顔して。
「お、帰りか。そのワンピ似合ってんね♪コーデもいい感じじゃん」
「ありかとー。玉ちゃんの指導です♡」
…ふーん。
ペアルックですか。恐れ入りましたな。
太輔はまた懐古する。
二度目のダメージを受けていた玉が、ふと深夜に漏らした言葉。
「”こっち”の立場が俺でよかったなぁって」
その言葉はいつも通りの舌の足らないまったりとした喋り方に、いつもと違う多少のうわづりが加わって、幼さが滲む。
「”こっち”って?」
「聞きたく無い事、いっぱい聞いて知って、ダメージ受けて、ボロボロになる立場。」
太輔はそこまで聞いても彼の言っている事が理解出来ず困惑する。
バカだよね…と自嘲気味に笑みを浮かべながら、傷心の弟は続けた。
「俺、今ものすっごく辛いんだよね。だから、もしコレが逆の立場で、俺が今のあの子みたいにしてて、あの子が今の俺みたいに傷ついてたら嫌だなぁと思って。
…ヤだもん、俺。好きだった女の子にこんな思いさせるの。」
彼の真白な肌に、目元の朱が強調された。
太輔はますます混乱していった。
こんなになってまで、相手を思いやる弟のこの気持ちはなんなのか。
言葉を発している本人の表情や表現の幼さとは裏腹に、強さの底が、見えなかった。
「なんだよ、それ…お前そんなにボロボロなのに。。。なんでそんなに相手の事考えられるの?」
思わず太輔は年下であるハズの玉に問うた。
「ん?なんでって…」
そんな玉が、マイコには何か今までとは違う対応をしているのは分かっていた。
ただ、やはり迷いはあるのだろう。
迷ってる間に、俺が頂いちゃっても知らないよ…と軽口を叩きたいところではあるが、太輔本人も正直迷っていた。
太輔にとっても、今までの女の子達とは少し勝手が違うのだ。