第6章 バイト
玉森とミツが居るジムから電車で二駅。
衛生的なタイル張りの地下鉄に乗って、バイト先のある駅に降り立つ。
階段を登り、地上に降り立つと都心特有のそれとはひと味ちがった賑やかな情景があった。
都内でも有数の高級住宅地で、各国の大使館などが隣接するそこは、かなり異文化に溢れていた。
緑豊かな公園方向に向かうと、路上にテーブルを出すカフェがあり、席を埋める客層だけをみると、とてもここが日本とは思えない。
マイコのバイト先は某有名スープ専門店がある角を曲がった数メートル先の雑居ビルの中に隠れるように存在していた。
「おはよーございます!」
「お、マイコお疲れー」
「健子ちゃんおはよ。早いね」
「おい!普通に健子って呼ぶな!しっかし今朝の寝癖はないわー。女子力ないわー。」
「うぅっ…!うっさい!」
シェアハウスの末っ子、健永と他愛もない会話をしながら調理場に顔を出す。
「おーはよーゴザイマース」
「オはよー」「おはよー」「ざいまーす」
みんなそれぞれに挨拶をくれる。
奥の個室に目を向けると、オーナー兼店長の中居さんが事務仕事をしている最中だった。
「店長、おはようゴザイマス!」
挨拶すると、低音と高音の入り交じった独特な声の答えが返ってくる。
「お、マイコ来たか。もうそんな時間って事だな」
挨拶もそぞろに、テーブルの上を片付け始める。
「今日の予約は4名、6名、3名ね。4-6-3のダブルプレーだ。」
多分、店長の好きな野球の何かなんだろうけどマイコには良くわからない。
「6名が個室ね。」
「うわ、メンドイなー」
「おいおいそんな事言っていいのかぁー、木村んトコの会食だぞ。」
「え、木村さん来るんだー!やたー!」
営業時間を過ぎても来客は中々ない。
今日は暇な日っぽいなー、と思った矢先に…