第6章 ズルい男《今吉翔一》
「ん………、朝、か」
カーテンの隙間から薄っすらと差し込む朝日に目を覚ますと、すぐ隣に今吉さんの寝顔があり、私の体は彼に抱き締められていた。
どうやら、行為の後処理を済ませ、私達は裸のまま眠ってしまったらしい。
(あー、まだ起きたくなかったな……)
今吉さんと体を重ね合わせた翌日に目覚めるこの瞬間が嫌いだった。
夢から覚めなければいけない、この瞬間が。
(私とこの人は、あの2人みたいにはなれないよ……)
昨日観た純愛ラブストーリーを思い出しながら、彼の寝顔を見ていると無性に泣きたくなった。
この人との出会いはサークルの飲み会。
友達の先輩に連れられてやって来たのが今吉さんだった。
友達に無理やり酒を飲まされ酔っ払った私の相手をしてくれたのも今吉さんで。
終電の時刻が近付き「帰りたくない」と駄々をこねる私に、今吉さんは「ほなワシの家来るか?」と言ってきた。
「手出さん保証はあらへんけど。……真由美ちゃんが選びや?」
「……今吉さん家に行く」
「分かった」
それから今吉さん家に向かい、酔った男女が2人きりで何もない訳がなく、私達は出会ったその日に体を重ねた。