第6章 ズルい男《今吉翔一》
「真由美ちゃんもこないな恋愛しとーなった?」
エンドロールをぼーっと見つめていると、隣に座っていた今吉さんに顔を覗き込まれた。
「……別に」
「さよか」
ニッコリと笑う今吉さんが何を考えているのか分からない。
あんな純粋な恋愛、今更期待してない。
だって私はあなたに夢中だけど、あなたは私じゃない他の女の子にも「可愛い」と言ってるんでしょう?
「ワシはあの主人公みたいな女の子好きやけどなぁ。何か一生懸命で素直で可愛いやん?」
「……。」
「何や自分、えらいご機嫌ナナメやなぁ」
「……そんなこと、ないです」
「嘘はあかんで?……なぁ、どうやったら機嫌直してくれるん?」
今吉さんはそう言いながら、私の耳元の髪に自分の指を通しサラサラと梳く。
「……イイコト、しよか?」
「っ…」
薄く開く今吉さんの瞳は妖しい雰囲気を漂わせていて、その瞳で見つめられると私は何も言えなくなる。
近づいてくる彼の顔。
拒否なんかできる訳なくて。
チュッと唇が押し当てられた。
「おいで」
私の手を取りベッドへ向かう彼に私は着いていくしかなくて。
ベッドに優しく押し倒され、もう一度重ね合わせられる唇。
それを合図に私達のいつも通りの夜が始まる。