第6章 ズルい男《今吉翔一》
夢主side
ビックリした。
大学生って、もっと爽やかな恋愛してるんだと思ってた。
サークルで知り合った先輩とデートを重ねて付き合うことになったり、一人暮らしの彼の家に泊まってご飯を作ってあげたり、たまーにレンタカーを借りて遠出してみたり、そんな恋愛を夢に見てた。
♪〜♪♪〜〜
スマホから鳴り響く軽快なリズムの着信音が私にメッセージが届いたことを知らせる。
今吉翔一:今日どないする?
アプリを開けば映し出される名前とその内容。
(分かってるくせに……)
私が断るハズないのを知ってて、この人は毎週必ず私に「どないする?」と聞いてくる。
自分の意見を言うことはない。
「いつも通りで」と返せば、「了解」とだけ返ってくる。
業務連絡のようなやり取り。
私の恋愛は爽やかさの欠片も、ましてや甘さの欠片すらなかった。
***
講義が全て終わり、一旦自分の家へ帰って晩ご飯を食べシャワーを浴び、また化粧をして“完璧な自分”を作る。
あの人の前ではなるべく可愛い子でいたい。
(そろそろ出発しようかな)
化粧も、髪型も、服装も、キマってる。
男ウケの良さそうな薄いメイクに毛先だけ緩く巻いた髪、そして淡い色のワンピース。
私があの人に会いに行くときはいつもこんな感じだ。