第2章 災難《黄瀬涼太》
真由美side
「あ、あそこかな…?」
スマホのGoogl○マップを頼りに慣れない道を歩き続け、やっと辿り着いた風情のある旅館。
私は今日ココへ1人で泊まるのだ。
中へ入りチェックインを済ませようと受付へ向かい、今夜の宿泊予定を確認してもらっていると、だんだんと受付の若い女性の顔色が青くなっていく。
「っ……少々お待ち下さい」
女性の焦っている声を聞き付けたのか、女将さんらしき人も此方へやって来て何やら揉め出した。
「お客様、申し訳ございません!!」
その後、これでもかというぐらい深々と頭を下げる女将さんと受付の若い女性。
何事かと問えば、旅館側の手違いで私の予約していた部屋へ別の客を通してしまったらしい。
しかも今夜の予約は満室で空き部屋が無いとのこと。
「申し訳ございません!!」
「……。」
せっかくの1人旅で久しぶりに贅沢しようと思っていたのに、諦めるしかないのか。
「っ……相原様さえよろしければ、先にお通ししたお客様に相部屋の許可を取ってまいります」
「相部屋…?」
「はい。私共に全責任がありますので、今夜の宿泊代は全額サービスさせていただきますし、よろしければ……?」
「!!」
女将さんの「全額サービス」という甘い言葉に、私は詳細も聞かず「お願いします!!」と答えていた。