第2章 災難《黄瀬涼太》
_______After that
あれから数週間後、私は結局黄瀬君に連絡しないまま、普段通りの生活に戻っていた。
いつもの日常に戻れば、彼の存在なんていつか消えていくだろうって思ってた。
……だけど、甘かったみたい。
(どうして消えてくれないの……っ)
彼の存在が消えるどころか、日を追うごとに彼への“会いたい”という気持ちが強まるばかり。
黄瀬君は絶対好きになっちゃいけないって、自分が苦しくなるだけだって分かってるのに。
……頭では、分かってるのに。
気付けば私はスマホを手に取り、彼が書いてくれた連絡先を入力していた。
数回の呼び出し音の後、「はい」と久しぶりに聞く黄瀬君の声。
「もしもし?あ、あの……」
『掛けてくんの遅いっスよ、オネーサン?俺、待ちくたびれたっス……』
スマホから聞こえてくる彼の少し拗ねたような声にドキドキと心臓が高鳴る。
(こりないな、私……)
頭では分かってるけど、心はそれを拒否してて。
また恋をしようとしてる。
いや、もう出会った瞬間から恋に落ちてんだと思う。
災難だなんて言っておきながら、本心は寧ろその逆で……。
「あのね… 会いたい……」
『…俺も』
_______END