第2章 浅葱色
「ここは…」
気がついた私の目に飛び込んできた風景。それは静かな夜の町。でも、私の知る町ではない。ここは知らない。
「あ…簪が…」
付けていた簪が取れて地面に落ちる。
付け方が甘い分、かなり取れやすくなっているから。
とはいえ、何やら常識的には考えられない事態が今、目の前で起こっていることは確か。
簪が落ちたのもその前兆にすら感じられた。
簪を懐にしまうと、立って辺りを見回す。
「私は確か…銀髪の男に殺されて…。颯太は…」
共に行動していたはずの颯太の姿が見当たらない。
はぐれてしまったのだろうか。
いや、でも銀髪の男に共に殺されたはずでは…
「ゥヒャャャハァァ‼︎」
「!?」
聞き覚えのある気味の悪い奇声が辺り一面に響く。
銀色の髪。赤く鋭い目。荒い息遣い。
そして、浅葱色の羽織。
あの時と同じなのだろうか。でも状況が全く飲み込めない。
銀髪の男は3人。もし、先ほどの男と同類のものならば…勝ち目なんてあるわけがない。
そんな悠長に考えている暇などなかった。
ここにとどまっていてはまず間違いなく殺されるだろう。
あの赤い目からは慈悲のかけらも感じない。
なんとかして逃げなければ。