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薄桜鬼 群青桜

第6章 変若水


近藤「また隊士が増える予定だ。新たな屯所を探しておいた方がいいと思ってな。」

新選組の働きが認められた事もあり、入隊希望者が多く募った為、今の屯所ではいずれ手狭になるだろうという事で、新たな屯所を探す事となった。

今ですら雑魚寝をしている隊士も少なからずいるらしい。流石に申し訳なさそうに土方さんが言っていた。

しかし、新選組をよく思っていない人もいる訳であり、困難を極める移転先探しであった。

土方「西本願寺はどうだ。屯所としての立地も条件もよく、俺らが寺を拠点にすることで長州封じにもなる。」

山南「西本願寺は長州をはじめとする不貞浪士の隠れ蓑。我々を素直に受け入れるとは考えられません。惣領の動きを武力で押さえつけるなど見苦しいとは思わないのですか?」

近藤「山南くんの意見もごもっともだがな…」

斎藤「西本願寺を拠点とすれば長州は身を隠す場所を一つ失うことになる。位置もいざとなった時に動きやすい。」

山南「しかし、正義を欠いた大義などいずれ綻びがでます。」

伊東「山南さんは相変わらず非常に考えが深い方ですわね。しかし、物事を押し進めるには時に強引かつ大胆な策も必要ですわ。守りに入ろうとする気持ちはわかりますけど。」

その場で黙って聞いていた私も、伊東のその一言にイラつき、肩を揺らした。

伊東「その左腕は使い物にならないそうですが。でも剣客としては生きられずとも、お気になさることはありませんわ。山南さんはその才学と深慮で新選組を助けてくれそうですもの。」

千月「それは山南さんに生きた屍となり、屯所にこもって策を講じていればいいということか?ならば撤回していただこう。山南さんは確かに才学に秀でたお方だが、剣客としてもこの新選組に必要不可欠な存在。それをよく知りもしないお前などが侮辱など

山南「桜時くん!…やめてください。」

私はその一言で我に返り、すみませんと小さく一言こぼした。

その後、屯所移転は西本願寺で進めるということになり、ぎこちない空気の中解散となった。

部屋を出るとき、私にだけ告げた山南さんの言葉はひどく耳に焼き付いた。

秀でた参謀の加入で総長はお役御免だと。
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