第6章 変若水
その日、伊東が帰るのを確認すると近藤さん、山南さん、土方さんに伊東に私が女であると疑われた事を話した。
千月「私の男装に気付いたのは奴が初めて。恐るべき洞察力を持っているのか、それとも誰か私の素性を知る隊士に聞いたのか。詳しいことはまだわかりませんが奴は信用なりません。注意しておいた方がよろしいかと。」
土方「千月の男装が見抜かれるとはな。洞察力が良くてもお前の素性はそうわかるもんじゃねえだろ。勘のいい斎藤や総司にもわからなかったんだからな。まあ、わかった。」
山南「今の現状では情報も少ないですし、伊東さんは入隊されたばかりですからなんとも言えません。が、尊皇攘夷派であるが故に新選組をよく思っていない可能性はあります。警戒はしておいた方が良さそうですね」
近藤「承知した。しかし、伊東さんは優秀な人格者。むやみに詮索はせず、自然と接している方がいいだろう。その怪しむべき点とてまだ裏付けが取れていないからな。」
やはり近藤さんは伊東さんを信用しているようだ。下手に接するな、伊東の機嫌を害するなと。強く言い換えればまさしく伊東を信用しているが故に庇っているようにしか捉えられなくなる。
…あれ?
そういえば私はなぜこんなことを…
未来を変えたくない。
そう常に思って行動しているはずなのにこれから加入する伊東の悪評を…。
わかっていることではないか。
起こっていいことではないか。
なぜこんな…
これでは私は歴史が変わるように助言をしているようではないか。
その夜の私は自分に対する疑問や不安でしばらく感情が不安定になっていた。