第6章 変若水
伊東「貴方はここ最近入隊したばかりにも関わらず、新たに結成された11番組組長に抜擢されたと聞きました。」
千月「…それが、何か。」
伊東「貴方、女性ですわね。」
!?
どうしてだ。
私を女だと見抜いた者はいなかった。
中々に勘の鋭い隊士が多く在籍するこの新選組とて気付くものはいなかったというのに。
なぜこいつは…。
千月「女が新選組の、ましてや組長であるはずがありません。私はれっきとした男子。」
まずい。
今後新選組を裏切るような奴に新選組の弱味を握られてはならない。
伊東「あら。これは失礼。以前から城下でそのような噂を聞いていたものですから。やはり噂というのはあてになりませんわね。人から人へ伝わる際に何かしらの思い違いが生じて事実とは全く異なる内容にすり替わっていくのですもの。」
こいつ…やはり信用できん。
平助を巻き込み、近藤さんの暗殺を目論む。
私はそれを知っているが故に注意して接しようと決めていたが。
これは相当苦労しそうだ。
伊東「私の勘違いで不快に思わせてしまい、申し訳ありませんでした。新人隊士同士、仲良くしてくださいね。」
裏のありそうな笑み。
私もまた嘘の笑みを浮かべると「はい。よろしくお願い致します。」とだけ言って即座にその場を離れた。