第5章 信念
私の言葉を聞こうともせず、平助は突っ込んでいく。
確かに池田屋で沖田を圧倒した理由に病気もあげられるが、奴の強さはそれ以前の問題。
鬼。ましてや純血の鬼を相手に人間が相手になるはずもない。
それに平助の怪我はまだ…
そんなことを考えている間にも平助と風間の戦いは始まっており、当然ながら平助が圧倒的に不利な状況だと一目瞭然だった。
平助「ぅぐっ…。どうして片手でこうもあっさり…。ぐはっ…」
交わっていた刀が離れる。
平助はすぐさま風間と距離を取ると額を抑え始めた。
そう。池田屋で怪我を負ったところだ。
風間「ふん。やはりこの短期間ではあの傷も完治していないか。そのような状態ではもはや話にならんな。」
千月「風間、お前は薩摩の者なのだろう。ならばこの戦においては身内ということだ。なぜ…」
風間「俺が興味があるのはお前だけだ千月。奴は邪魔。そして奴自身も俺を敵と見なしている。戦う理由などそれだけに過ぎん。」
千月「私に興味がある…だと?」
風間「今はお前には手を出さん。約束しよう。しかしこいつは別だ。紛らわしいしな。始末する。」
駄目だ。話が通じない。
平助も額を抑え辛そうにしている。
風間はきっと私が平助の盾となってもすぐに隙をついてくる。
平助自身が何とかするしかない。しかしこの状況では動けない。
きっと私がするべきなのは一つだけ。
千月「平助、目を閉じてて。」
平助「ち…づき…何を…言って…」
千月「いいから早く!」
そして私は平助の額に手を当て目を瞑る。
黒く腰まで伸びる髪は白く逆立ち、額に一角の角が生える。
力が体内に集まる。
その時目を開く。
右は金、左は赤い瞳。その目で平助を見つめる。