第5章 信念
??「池田屋ではご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」
斎藤さん達と接触する男はそう切り出す。
斎藤「そうか。あんたが池田屋にいた凄腕か。大方、薩摩藩の密偵としてあの夜も長州勢の動きを探っていたのだろう。」
そこまで言うと斎藤さんは刀を抜き剣先を男に向ける。
斎藤「あんたは新選組に仇を成した。」
??「しかし、今の私には君達新選組と戦う理由がありません。」
斎藤「俺とて騒ぎを起こすつもりはない。あんたらと目的は同じくしているはずだからな。だが、侮辱に侮辱を重ねるのであれば我ら新選組も会津藩も動かざるを得まい。」
??「こちらが浅はかな言動をしたのは事実。この場にいる薩摩藩を代表して謝罪しよう。」
男のその言葉を聞き、斎藤さんは刀を引く。
天霧「私としても戦いは避けたかった。そちらが引いてくれたことに感謝。私は天霧九寿と申す者。次にまみえる時、お互いが協力関係であることを祈ろう。」
そう言い終えると天霧と名乗る者は薩摩兵の間を割くように去っていった。
斎藤「居合で脅せば容易に引くと思ったが。薩摩にも厄介な輩がいるようだな。話の通じる点は救いかもしれんが。」
公家御門では、何度も銃声が響いていた。
それを避けながら原田さんの槍が男に向けられる。
そしてその槍もまた避けられる。
??「てめぇは骨がありそうだな。…にしても、突っ込んでくるか?普通。」
原田「小手先で誤魔化すなんざ、武士としても男としても情けねぇだろ。」
不知火「俺は不知火匡だ。お前の名乗り、聞いてやるよ。」
原田「新選組十番組組長、原田左之助。」
不知火「そろそろ頃合いだ。今日のところはこれぐらいにしてやる。新選組の原田左之助、俺様の顔をしっかり覚えておくんだな!」
不知火と名乗る男は刀を拾い御所の壁に刺すと、その反動で外へと飛び越えていった。
「次は殺す」と言い残して。
原田「忘れるかよ不知火匡。俺の槍を避けられた奴はお前が初めてだ。」