第4章 鬼
平助「千月、もう大丈夫なのか?」
千月「うん、問題ない。熱も下がり、咳も出ない。」
原田「本当か?お前の事だ。無理してないか?」
千月「いつも通りです。」
一晩ゆっくり休んだ結果、症状は治まり、普段通りの生活をしても難はなかった。
土方「千月、お前の調子も戻ったことだ。先日の池田屋事件の事について報告してくれ。」
千月「あの晩、二階には二人の男がいました。一人は図体の大きな男で平助が対峙していました。その際に平助は頭部を強打した様です。もう一人は昨日裏門前にいた金髪の男です。風間千景と名乗っていました。その者は沖田が相手をしていましたが、その際に血を吐いて倒れ、その際に私が駆けつけました。」
その後の報告は自身の力の事を伏せながら話した。
千月「風間はその後私に立ち向かおうとはせず、図体の大きな男と共に窓から逃亡。私は平助に応急処置を施し、沖田の様子を見ようとしたところで高熱により倒れました。」
土方「成る程。わかった。平助、お前からも報告を頼む。」
平助「大まかな事は千月の言う通りで間違いねえ。ただ、その図体のでけえ男は『長州ではない』って言ってた。それに、俺は確実に頭に傷を負った。そのあとは気絶してたから覚えてねぇけど気がついたら完全に塞がってたんだ。それこそ羅刹並みに治りが早かったな。」
斎藤「まずはその図体のでかい男だが、長州ではないとすると、何らかの目的で潜入した他藩の密偵と考えるのが妥当だろうな。」
沖田「平助の怪我の方は、僕もその場にいたから見たけど、結構重傷に見えたよ。応急処置は千月ちゃんがって言ってたね。一体どんな方法を使ったんだろうね。」
やはり誤魔化しきれなかったか。
でも、この力の事はまだ話せない。
まだ、その時ではない。
千月「見た目ほど酷くはなかったので。私は止血をしただけです。」
土方「止血をしたと言ってもあの短時間で傷が癒えるのはおかしいだろ。いい加減本当の事を話しやがれ。」
無理があったか。
だからと言っても今は言えない。
千月「それはお答えできかねます。今はまだ。」
平助「いいじゃねぇか。よくわかんないけど俺が助かったのは事実なんだし、今はってことはそのうち話してくれるだろ。」
平助の助けもあり、この場は凌ぐことができた。
ただ、いつまで言わずに済むか。それはまだわからないが。