第31章 希求
「お前に教える義理はねえよ。そもそもこれはオレ達新選組の問題だ。オレ達で方をつける。」
風間の態度がどこか気に入らない様子の藤堂が、むっとしながらそう言い放つ。
なんとなく、軽く喧嘩が始まってしまいそうな空気感に包まれ始めた。
あまり2人の相性は良くないらしい。
「風間さん」
少しだけ緊張感に欠けた2人とは正反対に、久摘葉は不安げだった。
「颯太くんは……。風間さんのところにいた時って、どんな風に過ごしていたんですか?」
数秒、沈黙が走った。
「夜真木は一途な男だ。千月……お前をいかに負の道へ落とさぬようにと様々な選択を模索していたようだ。俺からすれば、ただの愚か者だがな。」
風間はことの他あっさりと答えていた。
「俺以外の鬼とも接触し、常に考えていたのは貴様のことだけだろう。亡き母の命、兄としての役目、それしか言わん奴だ。」
「……颯太くんと、戦わなくちゃいけなくなりました。」
以前夜真木に対して、鬼の一族を見限った、と言ってはいたが、彼の人となりを風間なりに評価していた。
その事実を噛み締めて、ポツリポツリと久摘葉は話し始めた。
「八瀬姫が……。私と颯太くんの世界の八瀬姫が、こっちに来ています。颯太くんは、八瀬姫のところにいて……。多分、私たちの敵に……なります。」
「その八瀬姫の目的はなんだ。」
「私を元の世界へ帰らせたいのと……。それから、颯太くんを……。」
「……始末するつもりか。」
風間も察したように呟いた。
「元より貴様達の行動を制限しているという長の話は夜真木から聞き及んでいる。千月や夜真木が望まずとも強制させるだけの権限……いや、力が備わっているようだ。」
「詳しく知っているのであれば、教えていただけませんか?」
「なら、それは俺から教えてやるよ。」