第31章 希求
「無駄な戯言に花を咲かせている余裕があるのならば、当然あの紛い物を殺す算段も整っているのであろうな?」
それは突然の再会だった。
周囲を警戒しながら山道を行く藤堂と久摘葉に徐に声をかけたのは、幾度も相対してきた鬼。
木に背を預けて様子を伺うようにこちらを見る。
「風間……。」
その名を藤堂が迷惑そうに呟いた。
「今はお前の相手をしてる暇ねえんだけど。」
「自惚れるな。元より貴様なんぞに用はない。」
吐き捨てるように風間は言う。
以前と何も変わらず、誰の協力も得ることなく、ただ己のするべき事を真っ直ぐに捉えていた。
敵対していた者とはいえ、その迷いのない在り方を少し羨ましそうに久摘葉は風間を見つめていた。
「ここで再開すると言うことは……、風間さんも千姫の元へ?」
「小煩い女だが、あれも同胞。我が同胞を紛い物に落とした報いを受けさせねばならん。」
風間は久摘葉の問いに答えると、木に背を預けるのをやめて今度は久摘葉の正面へ向き直り、問う。
「その後、奴らに動きがあったなら教えろ。」