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薄桜鬼 群青桜

第31章 希求


 外に出よう、と藤堂は立ち上がり久摘葉の手を引く。

 青空に橙がかかり、太陽が眠りにつく少し前の、少し暖かでどこか寂しい空。
 もう動き始める時間だと、告げている。


「もう…わからない。」


 指の間を通り抜けていく、水のような言葉だった。


「どこを考えればいいのか、そもそもそれがわからないの。私が替えの効かない特別な鬼だって事は…信じたくないけど、わかった。けど、それがどれだけ重要なのかは、まだ何となくしか…」


 先へと進みながらも、久摘葉は自身の悩みを零していた。

「それにね、私…自分の事よりもっとずっとわからなくって、わからないから怖くて不安になる。…どうしてあの時颯太君は敵意を込めて攻撃してきたのかなって。どうして八瀬姫のいいなりに…。」

 不安という本の中に、一頁毎に記載された内容を紐解きながら読み進めていたい気持ちと、ビリビリに引き裂いて放り投げてしまいたい気持ちとで鬩ぎ合い、反発し合う己の感情を制御も、理解すらも出来ていない様な、自分の事を不明瞭で疑心に満ち溢れた存在として捉えている。

「平助君は…凄いよ。自分がこれからするべき事から目を背けてない。山南さんを討たなければいけないって受け入れてる。」


 私なんかとは大違い
と、静かに息を吐くと、久摘葉はやるせなく笑った。

 けれど藤堂は、そんな事ねえよ。と首を横に振った。
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