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薄桜鬼 群青桜

第31章 希求


「お前な…。なんでそんな呆けた顔してんだよ。…あんな話を聞いて、自分の全部否定されて、挙げ句の果てに連れ去られそうになったんだぞ? そんなに人の心配する余裕なんてないだろ。」
「わ、私のは…、必要な事だから。」
「いいから。久摘葉も横になっとけ。休める時に休んどかないと、それこそいざって時に動けないし。」

 藤堂は半ば強引に久摘葉の体を横たえる。
 少し埃と砂の混ざった古材の香りは、決して心地良いものとは程遠く、背中に当たる固い感触もとても体の休まる環境ではなかっただろう。
 しかし、藤堂の気遣いあってか、久摘葉は少し安らかな表情を取り戻していた。

 そんな久摘葉を確認し、藤堂もまた壁に背中を預け、浅い眠りについた。

 久摘葉は薄っすら瞼を開けてポケットに入った膨らみをそっと撫でる。
 昨晩の出来事は紛れもない現実。免れる事の出来ない再会の日までに結論を急く様にと、小瓶が小さく揺れていた。



 血を欲し、苦しみもがく羅刹。
 人ではなくなってしまったもの達の姿を、久摘葉も少なからず目に焼き付けてきたのだった。
 彼らはどんな思いであの薬を手に取ったのだろうか。
 側で眠る藤堂の姿を真っ直ぐ捉えながら、ずっと考え続けている様だった。


 結果、久摘葉はあまり眠れてはいない様だった。
 それでも藤堂の気遣いを無下にはしたくないと、楽な体制を保ちながら考え続けていた。
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