第30章 人形
微笑む久摘葉、そして八瀬姫。
久摘葉はその笑みを見て、許しを得られたのだ、と安心を得ていたのだった。
「大方予想通りとはいえ…致し方ない。」
しかしそれは母親の妥協、ではない別のもの。
八瀬姫は袂からとある代物を取り出した。
それは新選組を執拗に弄んだ、彼らもよく知る闇の雫。
「変若水…!」
藤堂の叫びと同時に、八瀬姫はその小瓶を地面へ転がす。
やがて颯太の足に当たって動きを止めた。
「夜真木、わかっておるな。」
「っ!?」
颯太の目は変若水に向けられていた。
次第に瞳から光が奪われている様。
「お前…!夜真木に何をした…!!」
その問いには目もくれず、久摘葉を嘲笑うかの様に姫は言う。
「さて、私は戦闘能力など持ち合わせていないのだが…。夜真木は流石に知っていただろうなあ。なのに何故、彼奴は私の言葉に耳を傾けたのだろうな。」
「藤堂!!!久摘葉を連れて逃げろ!!!」
その一言一言に重みが生じている。
八瀬姫の本当の言葉。
「夜真木、それを飲め。そして
__________久摘葉を殺せ。