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薄桜鬼 群青桜

第1章 銀


「よっ!おはよ! 千月!」

やたら軽快な声の持ち主はここで働く幼馴染。
代々桜時家に使えてきた夜真木家の一人息子、夜真木颯太(よまき そうた)
数少ない桜時家の内情を知る人物。

「…おはよう。」

「ったくなんだよ。いつもいつもそんな素っ気なくさ。一応幼馴染だぜ俺。そろそろ心を開いてくれてもいいんじゃないのか?」

心は開いているつもりなんだけどな。

何の返答も返さない私を見て辛そうな笑顔。

重い沈黙。ただほうきの音だけが残って枯葉の散る風景はただ切なく冬を知らせる。

こんな沈黙、日常のはずなのに。
この辛さにはいつまで経っても慣れない。

「今日も聖祭…あるんだって…。」

気付いたらそう言っていた。
颯太の血相が一瞬で変わる様子は私にもわかった。

「また聖祭か…。最近ずっと続いてるな。大丈夫なのかよ…。」

私に背を向けてそう言う。
颯太も私の護衛という形で付き添うため、どの様な無残な儀式か知っているからこその言葉だった。
背を向けていても瞳に熱が帯びているのがわかる。

「大丈夫じゃなくてもやらなければならない事だから。」

それだけ呟くと落ち葉を掃く。

「何が"聖なる祭"だよ。あんな無惨なもの。ただの制裁じゃないか。」

私はその言葉を肯定するように目を閉じた。
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