第1章 銀
「千月様、おはようございます。」
襖の裏から使用人の声がする。
瞼を開け自分の目で朝が来たことを自覚すると重い胴体をゆっくりと起こす。
これが私の到底変わり用のないごく当たり前の日常。
代々続く巫女の一族。
私はその五代目当主。
私の仕事は神の望む世界を維持するために人を斬る。
「おはようございます。姫様。今日のご予定ですが…」
朝食をとりながら今日の予定を伝えられる。どうせいつもと同じことの繰り返し。
きっと予定なんて聞かなくても支障は出ないだろうな。
「それから本日も聖祭がございます。」
今日も…か…。
「姫様?朝食は…」
「…もう要らない。ご馳走様。」
聖祭の言葉を聞くや否や、早々に席を立つ。
私の大嫌いな、しかし秩序を守るための大事な儀式。
その真意を考えながらそのまま外に出た。