第28章 虚偽
藤堂も少女の存在に気付く。
やはりそこから微動だにせず、こちらの様子を伺い続けている。
「話には聞いていた。が、ここまで似るものなのか。お前もさぞ驚いただろう。この惨劇の当事者になってしまったのだからな。なあ、藤堂平助とやら。」
「何者だ。どうしてそんな事を知ってる?あんまり子どもに刃物は向けたくねえし、さっさと答えてもらいたいんだが」
藤堂の表情が強張る。当たり前だった。
新選組でも幹部以外公にされていない事を除いても、別世界の者だと容易に気付けるものではない。
そして、表向きには死んだとされている藤堂の名を知っている事、そして同じ顔の彼を知っている事。
子どもに刀を向けたのは、おそらく自分の常識が通じる相手だと思っていないからだろう。
藤堂の目に迷いはなかった。
「危険を冒してまで不死身の羅刹に殺されてきたのか。」
「同胞の身を案じ、側に駆け付ける思いの何が悪いというのだ。」
「話は颯太から聞いてる。そんな作り話聞く耳は持たねえよ。」
おそらく藤堂の中で少女の正体はおおよそ見当はついているのだろう。確信しているように問い詰めていた。
「そう急かしたところで何も変わらん。役者が揃えば舞台は幕を開ける。」
少女は予言していたように振り返る。
「どうしてあんたがここにいる」
颯太がそこに立っていた。
「八瀬姫…」