第28章 虚偽
「私はお前を知っている。それは紛れもない事実だ。受け入れ難くとも、それがお前のたった一つ経験した過去。この件に関して今私はお前に嘘偽りを教えようとは思わん。」
「今、とはどういう意味でしょうか?」
「残念な事に過去の私はお前に真実を伝えようとはしなかった。それがこちらに利益をもたらすと思っていたからだ。しかし、今とは状況が違う。真実を教える時が来たと、そう思っている。」
「…話してください。どうせ私は今まで何を教えていただいたのか覚えていませんから。」
「まず一つ、大前提として言っておくが、
______お前は全く別の世界からここへやって来た。」
「久摘葉!!!」
真実を途切れさせてその場に介入する刹那の影が、2人の間に立つ。
「平助君!?無事だったんだね、よかった。怪我は大丈夫?」
「お前な…。心配してたのはこっちだっての!悪いな、怖い思いさせちまって。大丈夫か?」
「平気だよ。でも…」
そこまで言って久摘葉は俯いた。
喜びも束の間、先ほどの少女の発言を忘れたわけではなかった。
「私、ここの人じゃないんだって。平助君は知ってたの?」