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薄桜鬼 群青桜

第27章 再来


それは久摘葉にとって願ってもない事だった。
依然として南雲が目の前に差し出している赤い小瓶にいつの間にか目を奪われていた。

「思い…出せる?戦う強さも、千月と呼ばれる私の姿も、全部?」

「そう、全部。ぜーんぶ思い出せるよ。」

今の久摘葉はまるで洗脳にかかってしまったかのようだ。
視界はいびつに形を変えながら、そして誘惑の声だけが異常に強調され、頭の中で反響する。

「全部…」

いつの間にか久摘葉の右手は変若水に向けてゆっくりと直進していた。


のだが、

草木を揺らす音が、2人の近くに聞こえてきた。

「…いいところだったのに。」

南雲は邪魔が入ったと舌打ちすると、無造作に変若水を手渡して足早に去って行った。

久摘葉は結局受け取ってしまった変若水を咄嗟に袂に隠して、その木陰をじっと見つめた。
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