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薄桜鬼 群青桜

第27章 再来


「君はこれが何だかわかるよね?」

瞳を大きく見開き、思わず息が止まってしまった久摘葉。
無理もなかった。
差し出したそれは変若水そのものだったのだから。

「前にもあげたはずだけど、どうせ捨てたんだろ?」

「前にも?私は以前貴方から同じものを受け取っていたの…?」

「あれ?覚えてないの?記憶がなくなったって本当だったんだ。
…そうだよ。君は僕から受け取っていたよ。惨めに顔を歪めながら、悩んだ末に結局欲に負けて受け取った。そして千鶴を見捨てて走って行った。」

楽しげに話す南雲の姿は少しずつ久摘葉の心を乱していく。蝕んでいく。

「安心しなよ。君は間違った事なんてしてない。それに、結局あの時は飲まなかったみたいだし、今はまだれっきとした鬼だ。」

時折視線を木々たちに向けながら言い放った。ただし、情など甘い考えは彼の中には微塵もない。
変わらずただ久摘葉を追い詰める事を楽しみ、

「変若水って、人間が飲むとあんな卑しい化け物になるけどさ、鬼が飲むとちょっと違った効果が現れるんだよね。何だかわかる?」

そして誘惑する。

「失ったはずの力を取り戻せるんだよ。君の場合は記憶も戻るんだろうね。」
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