第27章 再来
こうして3人は共に仙台城へと向かっていた。
夜の険しい山道。本能的に高まる警戒心を常に全面に出しながら一歩、また一歩と踏みしめていた。
「にしても藤堂も久摘葉の同行をあっさり許しやがって。ぜってー置いてくって言うと思ってたんだけどな。どういう風の吹き回しだよ。」
先頭を歩く颯太が冗談交じりに笑った。
無理やり空気を変えようと足掻くように。殺伐とした雰囲気の中では不自然過ぎる言動にも思えたが、久摘葉の緊張を和らげようと見つけ出した言葉のようにも捉えられる。
「こいつが生半可な気持ちで付いてくるっていうなら止めてただろうな。」
藤堂はふと久摘葉に視線を向ける。
暗闇の中、ぼんやりと映るその姿。多くを失い今に至る久摘葉に厳しくもなお、認めている事をはっきりと言った。
「オレの本音だけ言えばさ。どんだけ久摘葉が強くても、わざわざ辛い現場に連れて行こうなんて思わねえよ。でも、今の久摘葉は、…なんつーか、肝が据わってるっつーか。むしろ心だけは、記憶を失う前より強くなってるような気がしたんだ。」
静かに溶け出す本音が、風になびく葉音に掻き消されていく。
ずっと側で見続けてきた誰より大切な存在を慈しみ、それ故の言葉も行動も全てが前面に出ている。
そんな颯太とは似ている様で異なる考え方だ。
本人の居る前で吐露されるその本心に久摘葉も安心を覚え、その心は柔らかな春の日差しの様な暖かい光でいっぱいに満たされた。
緊張は3人の心に残っている。
しかし、決戦に向け必要な緊張は、今は安定と共にゆっくりと休んでいた。