第26章 連鎖
斎藤が土方に対してこんな言葉を発した。こんな事、誰が想像しただろうか。
だが斎藤の目は本気であった。いつもと変わらない。自分が信じた道を選び進む、強い者が持つ目。
「わかってるのか斎藤。おそらく会津一藩じゃ城の奪還はほぼ不可能だ。それでも残るのか。」
そんな斎藤の姿を前に、土方は問いかける。
その覚悟を確かめるように内容を確認し、そして現実を突き付ける。
土方もまた強い目で。しかし斎藤のものとはまた違った、隊士の身を案じる優しさが混ざったような目。
「右差しは所詮邪道の剣術。しかしそれを無作法者と呼ばず認めてくれたのは新選組の面々だけです。そしてその新選組は会津公あっての組織。その恩義を忘れて見捨てる事などできません。」
土方は斎藤の出した結論を認めた。
おそらく斎藤がここまで食い下がった所を見たのは初めてだったのだろう。
だからこそ認めたのかもしれない。
真意は土方本人以外知るものはいないが、互いに信頼しているからこそのやりとりだった事は確かだ。
ただ一人、久摘葉だけは瞼を伏せ、口を噤んでいた。
心なしか、瞳は揺らいでいるように見えた。