第26章 連鎖
羅刹を片付けた後、付近を探しては見たものの山南は見つからず、明らかに気を落とした様子でそのまま会津へ向かった一向。
道中、言葉という部類に入る物はそこになく、自然界の声だけが三人を追い越していく。
そんな中、金子邸以来安否不明となっていた土方と合流する。
そこで聞いたのは、久摘葉が颯太と共に脱出した後の出来事。
「近藤さんが…新政府軍に投降した。」
それだけを呟けば、歯を食いしばり地面を睨む土方。
藤堂は信じられないとばかりに驚き、颯太は何処か遠くを切なげに見据える。
久摘葉は口元を押さえながら、不規則な息を漏らす。
それはまるで言葉を恐れているかの様に。
たった一つの真実が負の感情を蔓延させた。
その脆くて鋭い針は次々と新選組を阻む罠を編み出していく。
それは自力で断ち切っていく他ない。
「俺は宇都宮に向かう。まだ終わりじゃねえ。何としても近藤さんを奪還してやる。」
真っ先に立ち直り決死の覚悟を決めたのは土方。
いや、初めから答えは出ていたのだろう。彼がそう思わないはずがない。
確かに真実は精神を容赦なく抉った。
しかし、いつまでも屈してはいられない。
土方に釣られたように、いつの間にか3人とも顔を上げていた。
「久摘葉を戦に連れて行くわけにはいかねえ。俺らはこのまま会津へ向かおう。斎藤と合流して次に備えるんだ。」
藤堂も羅刹。姿を見られる訳にはいかない。そして、久摘葉を一番近くで守る為に。
目指すは会津。