第26章 連鎖
「「させるかよ!」」
その声を境にグラリと体の軸が後ろに引き寄せられる。
今久摘葉の目の前には颯太が。そして、久摘葉の手を引き、山南から遠ざけたのは
「ごめん。強く引き過ぎたか?」
先ほどまで姿が見えなかった藤堂。
「おい藤堂。久摘葉ほったらかして何処で油売ってやがった。」
「金子邸付近で山南さんの姿を見かけて、今まで尾行してた。」
互いの表情を一瞬たりとも窺う事なく、問いを投げかけ、それに答えた。
「この間、とんでもない事してくれたしな。ここで逃すわけには行かなかったんだよ。」
そのやり取りの間に、藤堂は颯太の横に並び、共に久摘葉を背に庇う。抜刀し、静かな闘志を山南に飛ばして。
山南は仕方ないとばかりに抜刀すれば、瞬時に戦いの火蓋が切って落とされた。
怒りと悲しみ。それに耐えかねたのか、藤堂は真っ先に山南に斬りかかる。
山南は怪しく微笑みを漏らせば、自身の刀で藤堂を抑え、鍔迫り合いになる。
「裏切り者に正々堂々とかするつもりないから。二人掛かりで確実に首貰うからな。」
その隙を狙い、颯太が振り下ろした刀は山南の左腕に傷をつけ、洋服に血が染みていく。
ただ、忘れてはいけない。
「勿論これは真剣勝負などではない。貴方ごとき不完全な鬼に言われるまでもありません。」
山南が、羅刹隊を統率している事を。
刹那、影から無数の羅刹が飛び出してくる。その狙いは言うまでもなく久摘葉。
間一髪。藤堂はすかさず久摘葉の手を引きその身を包む。
颯太もまたしかり。
二人の猛攻から逃れた山南はすぐさま姿を消す。
「まあ、今日の目的は達成しました。戦果はそれで十分です。では、生きていれば、また会いましょう。」
余裕の言葉のみ置き去りにして、再び姿を消した。