第26章 連鎖
一向は会津へ向かう。
慶喜公が寛永寺にて謹慎されている中、これ以上江戸での対抗が出来ない。駐屯し続けるのは難しいからと、決定された。
部隊に西洋式の訓練をさせる為、斎藤のみ先行して会津へと向かっていた。
京での活躍がまるで嘘の様な光景だ。
隊士からは活気が薄れ、一瞬たりとも緊迫した空気が解れる事はない。
見えない何かからの圧力を一身に感じながら、確実に一歩ずつ大地を踏みしていった。
「近藤さん、お茶をお持ちしましたよ。」
「ああ、すまんな。」
その後一向は会津に向かう準備が整うまでの間、下総・流山にある金子邸へと移動する事となった。
なぜ久摘葉がここに居るのかと問えば、それは颯太の提案だった。
理由を言いさえしなかったものの、今まで窮屈な思いをしてきただろうと、近藤はその提案を受け入れたのだった。
負け戦に加え、試衛館時代からの同志の離隊。積み重なる亜天候な事の数々に、以前ほどの威厳を感じなくなってしまった近藤。
今回の提案をすんなり許可したのも、そんな不安定な心持ちだったからなのかもしれない。
困った様に笑っている近藤を前に、久摘葉もまた伏目がちになる。
その時だった。荒々しく襖を開ける音。音に反応すれば、一瞬で険しい表情の土方の姿が視界に飛び込んでくる。
「急いで逃げる準備を整えろ。敵に囲まれた。」