第25章 変動
別れの瞬間の空気が、まだ微かに残っていたその日の夜。
1人静かな空間に包まれながら先程の言葉を思い出していれば、突然音を立てた襖の向こうに現れたのはまさに関係している人物の姿。
中へ招き入れれば、寂しさとは別の感情が湧き出してきた。
「左之さんと新っつぁんとは、いつも馬鹿騒ぎしてさ、オレにとっては兄貴みたいな存在で。」
もしかしたらその別の感情とは、藤堂が感じた思いを察しとったものなのだろうか。
「オレがみんなと違う時間を生きるようになってからも、変わらず接してくれてた。」
それは定かではないが、その裏のない真っ直ぐな感情は、久摘葉にもひしひしと伝わっていく。
「なんかさ、寂しいって言うより、呆気ない所が左之さん達らしくて笑っちまってさ。でもこうしてみると、屯所の中がちょっと物足りない様な感じはあるよな。」
そんな藤堂に聞いてみたい事がある久摘葉。
それは原田が最後に残した言葉の意味。
_____「だったら、いつかお前の記憶が戻ったら、思い出した事全部平助に話してやれ。きっと喜ぶだろうしな。」_________
自分で考えても答えは出ない。
「久摘葉、さっきからぼうっとしてるけど大丈夫か?」
いや、今は知らないままで良いのだろう。
「あ、ごめんね。大丈夫だよ。」
今は他にすべき事があるのだから。