第25章 変動
それは近藤が屯所に帰って来た時の事。
側から見れば、単純に彼を慕って輪を作っているようにしか見えないものの、実際は違った。
久しぶりに顔を見せた事で周りの反応は様々だった。
喜ぶ者、普段通り軽く挨拶する者、そして、表情を歪める者。
それらの心情と共に、近藤の周りには次第に隊士が集まって来た。
そして間もなくして輪は崩れた。
「近藤さん。」
幹部隊士の一人、永倉が、力のこもった声色で声をかける。
その一言だけで、周りはざわついた。
誰もがその事の全貌を察したかの様に、ここの空気は一瞬にして冷えた。
「折り入って話してぇ事があるんだが、いいか。」
疑問系で口を閉じたものの、それは拒否を許さないような、そんな様子であった。
近藤は何も言わず、目線で返事をすると、静かに永倉の後をついていった。
その一部始終を見ていた原田が「限界が来たか」と呟いたことは、誰も知らない。
久摘葉の知らないところでまた歪みが生じた瞬間だった。